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2026/6/21 [SUN]
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『AI倫理』日本語版が発売 ルチアーノ・フロリディ氏が問う「社会善としてのAI」

東洋経済新報社より、ルチアーノ・フロリディ氏の著書『[AI倫理]』(監訳:藤本一勇氏、翻訳:NTTデータ・コンサルティング・イニシアティブ)が2026年6月17日に発売された。 同書は、「社会善としてのAI」とは何かを問う一冊である。AIを単なる技術革新や業務効率化の手段としてではなく、人間社会の価値、責任、環境との関係から捉え、AIと共存するための社会構想と行動基準を提示する。 著者のフロリディ氏は、イェール大学デジタル倫理センターの創設ディレクターであり、認知科学プログラム教授を務める。情報哲学、デジタル倫理、AI倫理、技術哲学の分野で知られる研究者である。 ## AIを「新しい形のエージェンシー」として捉える 原著『[The Ethics of Artificial Intelligence: Principles, Challenges, and Opportunities]』は、Oxford University Pressから2023年に刊行された。特徴は、AIを「知能」そのものとしてではなく、知能とエージェンシーが切り離された新しい存在として捉える点にある。 AIは人間のように理解し、意図し、責任を負う存在ではない。一方で、情報を処理し、判断を支援し、ときに人間の行動や社会制度に影響を及ぼす。フロリディ氏はこの性質を踏まえ、AI倫理を「賢い機械」の問題ではなく、人間社会のなかで作用する新しいエージェンシーの問題として考える。 生成AIやAIエージェントの普及が進む現在、問われているのはAIがどこまで人間に近づくかだけではない。社会のなかでAIがどのような役割を担い、その結果に誰が責任を持つのかという視点が重要になる。 ## 原則からガバナンス、社会善まで AI倫理の議論では、公平性、透明性、説明責任、プライバシー、安全性といった原則が繰り返し取り上げられてきた。だが、原則を掲げることと、それを実際のシステム設計や組織運用に落とし込むことは同じではない。AIの活用が広がるほど、倫理は理念ではなく、開発、導入、監査、規制、説明の各段階に関わる実務上の課題になる。 企業のAI活用にも、この問題は直結する。AIチャットbot、社内AIエージェント、営業支援、採用、顧客対応、文書作成、データ分析など、利用範囲は急速に広がっている。導入の焦点は、生産性向上やコスト削減だけでは済まない。 学習データや入力データの扱い、出力の正確性、バイアス、説明責任、ユーザーへの透明性、従業員や顧客への影響をどう考えるか。AIエージェントが人に代わって判断や操作を行う場面では、誰が権限を与え、誰が結果を確認し、問題が起きたときに誰が責任を負うのかが問われる。 ## 環境と持続可能性まで広げるAI倫理 AI倫理の射程は、人間と機械の関係にとどまらない。AI for Social Good、気候変動、国連の持続可能な開発目標(SDGs)との関係も重要な論点になる。 大規模AIモデルの開発と運用には、計算資源、電力、水、データセンターなどのインフラが関わる。一方で、AIは気候変動対策、エネルギー効率化、災害対応、医療支援、教育アクセスの改善にも使われ得る。 AIが社会善に資するかどうかは、技術そのものだけで決まるのではない。どの目的に使われ、どのように設計され、誰の利益と不利益を生むのかによって変わる。『AI倫理』は、AIと共存する社会の設計を考えるための一冊である。 :::box [関連記事:AI研究者と哲学者が共著『現代社会を生きるための AI×哲学』刊行] ::: :::box [関連記事:人工知能学会、設立40周年でAI社会実装へ提言 「人間の思考を代替しない」活用と、研究基盤・教育・倫理・制度整備を重視] ::: :::box [関連記事:政府、AI事業者ガイドライン改定案でAIエージェントとフィジカルAIを追加──「人間の判断必須の仕組み」明記、Xで議論広がる] ::: :::box [関連記事:生成AIに個人データは入力できるのか──JDLAが「AI利用」の法的論点を整理した報告書IIを公開] ::: :::box [関連記事:「AI推進法」成立、企業の責務と政府の新体制を明文化——罰則なき基本法で実務とガバナンス両立へ] :::

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