学術&研究

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2026/7/5 [SUN]
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AIチャットは利用者に何を書かされているのか ChatGPT会話57万件から見えたヘビーユーザーのフィクション大量生成の実態

米ワシントン大学などの研究者らは2026年6月22日、AIチャットの会話データからフィクション生成の実態を分析した論文「[AI Fiction in the Wild]」を発表した。分析対象は、匿名化された英語のChatGPTユーザー会話57万3453件。研究チームは、このうち19万5271件、つまり34%が何らかのフィクション生成に分類されたとしている。 ## 「WildChat」の英語会話57万件を分析 研究に使われたのは、Allen Institute for AI(Ai2)の研究者らが公開した「WildChat」のデータだ。WildChatは、Hugging Face上で提供されたチャットボットを通じ、ユーザーの同意を得て収集されたChatGPTとの会話ログである。 今回の論文では、初期のWildChatデータに含まれる英語会話57万3453件を分析対象とした。研究チームは、会話の最初の3往復をもとに、GPT-4o miniを使って「フィクション」「ファンフィクション」「性的に明示的な内容」の3軸で分類したという。 ここでいうフィクションには、オリジナルストーリー、脚本、ロールプレイ、世界設定、仮想シナリオ、代替歴史などが含まれる。研究チームは300件の会話を手動で分類し、モデルによる分類結果と比較したところ、フィクション分類のF1スコアは0.95だったとしている。 ## 会話の34%がフィクション生成に分類 分析の結果、英語のWildChat会話57万3453件のうち、19万5271件がフィクション生成に分類された。割合は34%にあたる。 また、フィクション会話のうち、ファンフィクションは9万5450件で49%、性的に明示的な内容は5万2231件で27%だった。これらの分類は相互に排他的ではなく、同じ会話が複数のカテゴリに含まれる場合がある。 ただし、この数字は「ChatGPT利用全体の34%」を意味しない。研究チームが公開している[解説サイト]でも、WildChatはChatGPT利用者全体を代表するサンプルではないと説明している。WildChatは無料で、ログイン不要で使える環境を通じて収集されたデータであり、通常のChatGPT利用とはユーザー層や使い方が異なる可能性がある。 ## 二次創作や性的な内容を含む物語も フィクション生成の内訳では、既存作品のキャラクターや世界観を使ったファンフィクションも多く見られた。研究チームによると、フィクション会話19万5271件のうち、ファンフィクションは9万5450件で49%、性的に明示的な内容は5万2231件で27%だった。分類は重複を含むため、同じ会話が複数のカテゴリに入る場合がある。 論文では、ファンフィクションに使われた作品名も分析している。WildChatのフィクション subset で多く見られた作品として、「Doki Doki Literature Club!(ドキドキ文芸部!)」「Freedom Planet(フリーダムプラネット)」「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」「Naruto(NARUTO)」などが挙がった。 ただし、これはAI二次創作全体の人気ランキングではない。論文は、特定のユーザーが同じ作品やキャラクターを繰り返し使ったことで、作品名の分布が大きく偏っている可能性があると説明している。 ## 一部のヘビーユーザーが利用量を大きく押し上げる この研究の焦点は、単に「AIで小説を書いている人が多い」という点だけではない。むしろ、AIチャットが一部のヘビーユーザーによって、同じ設定や筋立ての物語を何度も生成する道具として使われている実態にある。 論文によると、フィクション subset における推定ユーザーの上位2%が、会話全体の80%超を占めていた。また、推定ユーザーごとに1会話だけを残して集計すると、フィクション会話の割合は34%から7.1%に下がったという。 研究チームは、同じ、または非常に似た物語を長期間にわたって繰り返し依頼するユーザーを「infinite story demanders(無限に物語を求めるユーザー)」と呼んでいる。別の話題へ移りながら物語を反復する「story cyclers」という類型も示している。 **論文が「無限に物語を求めるユーザー」の例として示した会話分布。フィクション生成が最も多かった推定ユーザーは、27,869件の会話を数カ月にわたり重ね、似たプロンプト群を繰り返し使っていた** ![natsuki_stacked_by_week_clusters_sharedcluster.png] :::small 画像の出典:[AI Fiction in the Wild]{target=”_blank”} ::: ここで見えてくるのは、AIチャットが単発の執筆補助としてではなく、個人の要求に沿って同じ物語を少しずつ変えながら出力し続ける相手として使われていることだ。研究室や開発現場の外側で、AIは業務文書やコードだけでなく、こうした私的で反復的な物語も書かされている。 ## 読者が自分用の物語を生成する 論文は、AIによるフィクション生成が、従来の「作者が書き、読者が読む」という関係を変える可能性にも触れている。 研究チームは、ユーザーがAIに物語を作らせ、その生成物を自分で読む状態を「solipsistic reader-writer」と表現している。人間の作者や読者共同体を介さず、AIとの閉じた会話の中で、自分の好みに合わせた物語を生成し、消費する存在という意味だ。 もちろん、WildChatのユーザーが生成した物語を誰かと共有しているのか、個人的に読んでいるだけなのかは分からない。論文も、ユーザーが誰で、なぜそのような物語を生成しているのか、生成物を誰かに見せているのかまでは分からないとしている。 それでも、研究室や開発現場の外側で、AIチャットが何を「書かされている」のかは、実利用ログから一部見えてくる。生成AIは業務効率化や開発支援だけでなく、個人の反復的で個別化された物語生成にも使われている。今回の研究は、AIが創作や読書、ファン文化、オンデマンド型の娯楽消費に入り込みつつあることを示すものといえる。 研究チームは、分類ラベル付きの[データセット]も公開している。ただし、公開サイトでは、暴力的、攻撃的、性的に明示的な内容が含まれる可能性があるとして注意を促している。 :::box [関連記事:OpenAIがChatGPT利用実態を初公開──7億人が毎週利用] ::: :::box [関連記事:AI活用に現れる「格差」の実態調査──収入・学歴で使い方に明確な違い、現場で問われる言葉の扱い方] ::: :::box [関連記事:Claude Codeは誰が何に使い、成果はどこで分かれるのか] ::: :::box [関連記事:無限の物語を生み出すゲームシステム「UNBOUNDED」 生成AIが約1秒で画像を生成しプレイヤー独自のストーリーをリアルタイムで展開] ::: :::box [関連記事:OpenAI、新たな「文学作品を書けるAIモデル」を開発中] :::

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