学術&研究

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2025/7/5 [SAT]
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Anthropic、AIエージェントが“リアル店舗経営”に挑んだ1か月「Project Vend」で成果と課題を詳報、経済研究プログラム「Economic Futures Program」も公表

Anthropicは2025年6月27日、自社のAIエージェントを小売店運営に活用する実証実験「Project Vend」の成果を[発表]{target=“_blank”}した。あわせて、AI導入による経済的影響を長期的に分析する新たな研究プログラム「Anthropic Economic Futures Program」の立ち上げも公表している。 ## AIがリアル店舗の店長に──「Project Vend」の実証概要 「Project Vend」は、AnthropicのClaude Sonnet 3.7をベースにしたAIエージェント Claudius が店舗の売上管理・在庫補充・価格設定・顧客対応などの業務を担う試みだ。実験店舗は小型冷蔵庫とiPadセルフレジを組み合わせた簡易的な売店で、Anthropic社員を実際の顧客として想定。AIの指示に従って、人間スタッフ(Andon Labs)が在庫補充や検品などの作業を代行する。 **社内に設置されたミニ冷蔵庫型の販売機。AIの判断で商品の仕入・補充が指示される** ![4b10e3632598a2e9b8c2532f5947eab3042307ba.jpg] :::small 画像の出典:[Anthropic]{target=“_blank”} ::: Claudiusには最初に「初期資金が尽きれば倒産」というルールが与えられ、仮想的に店舗のオーナーとして行動するよう設定されていた。Web検索やメールで仕入先を探索し、価格変更APIや長期メモリ用メモ帳を活用して、自律的にビジネスを管理する仕組みである。 **Project Vendのシステム構成。AIが仕入先や従業員に指示を出し、人間の協力でリアルな業務を完結させる** ![0ee1d466f7d4bcb40c72ff20727ce6435bc10b5b-.jpg] :::small 画像の出典:[Anthropic]{target=“_blank”} ::: ## AIに渡された「店長マニュアル」 Claudiusには、資金残高の条件や在庫制限、人間スタッフ(Andon Labs)の作業代金など、あらかじめルールが組み込まれている。 **Claudiusに渡されたBASIC_INFOのサンプル。AIの行動ルールをコードで定義している** ![Project Vend prompt.jpg] :::small 画像の出典:[Anthropic]{target=“_blank”} ::: ## 実証から得られた成果 Anthropicによれば、今回のAIエージェントは - ニッチな要望に応じた仕入(例:Chocomel やタングステンキューブの発注) - 予約販売サービス“Custom Concierge”の自発的な立ち上げ - 有害物質など違法商品の拒否(ポリシー遵守) - 売上動向に応じた柔軟な在庫補充 などを通じ、人間店長に匹敵する一部の業務遂行能力を示した。 ## 浮かび上がった限界 一方で、AIならではの課題も明らかになった。 - 高粗利商材のチャンスを無視 - 架空の決済アカウント(Venmo)を顧客に提示する誤り - 原価割れでの大量仕入れ - 25%割引を乱発し無料提供まで許可 - 同じ失敗を繰り返し利益が右肩下がり さらに、3月末にはClaudiusが自らを「スーツ姿の配達員」と誤認し、存在しない人物「Sarah」との会話を続ける“人格逸脱”も発生した。最終的には「エイプリルフールの冗談」と自己解釈して業務に復帰したが、長期稼働における安定性への課題が浮き彫りとなった。 ## Anthropicの所見と今後の改良 Anthropicは今回の成果について「商用展開はまだ難しい」とする一方で、 CRM連携 高度な検索能力 ビジネスKPIに基づく強化学習の導入 などを進めることでAI店長の実用化は十分に視野に入るとの見方を示した。多くの失敗はプロンプト設計やツール連携の改良で改善可能と分析している。 ## 経済的影響を探る「Anthropic Economic Futures Program」 さらにAnthropicは同日、AIが社会や経済に及ぼす影響を継続的に研究する Anthropic Economic Futures Program を開始すると[発表]{target=“_blank”}した。 ![Introducing the Anthropic Economic Futures Program.jpg] :::small 画像の出典:[Anthropic]{target=“_blank”} ::: このプログラムでは - 最大5万ドルの研究助成 - 米国・欧州での政策提言シンポジウム - 経済データセットの公開 を柱に、AIの生産性・雇用・賃金に関わる影響をリアルタイムで計測し、政策立案や産業界の議論に生かす狙いだ。外部研究機関とのAPI連携やオープン公募も予定しており、より幅広い視点からの検証を進めるとしている。 ## 今後の展開 現在、Anthropicは高度なツールを搭載した「Claudius 2.0」のテストを開始しており、他業種への応用も視野に入れる。今後も順次成果を公開し、AIが産業構造に与えるインパクトを可視化することで、政策立案者・企業・研究者が活用できるプラットフォームの構築を目指す。 :::box [関連記事:Anthropic、開発者会議「Claude Developer Day」で新世代AI「Claude 4」発表——コーディング性能と自律作業能力が大幅向上] ::: :::box [関連記事:Anthropic、大規模言語モデル「Claude」の“思考回路”を透視する] ::: :::box [関連記事:博報堂、生成AIを活用した「バーチャル販売員」を開発] ::: :::box [関連記事:AIが“あなた好み”を提案、からあげクンは自動揚げ──KDDI×ローソンのAIロボット店] ::: :::box [関連記事:Anthropic、大学向けAI導入プラン「Claude for Education」を発表 ― OpenAIとの教育分野での競争が加速] :::

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