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米Arc InstituteとStanford Universityなどの研究チームによる、生成AIで完全なバクテリオファージのゲノムを設計する研究が2026年8月6日(現地時間)、米科学誌[Scienceに掲載]された。研究成果自体は2025年9月にプレプリントとして公開されていたが、今回の査読論文化にあわせ、ScienceはAIによるウイルス設計のバイオセキュリティ上の課題を論じた専門家による解説記事も同時掲載した。 ## 2025年に発表済みの「AI設計ウイルス」が査読論文に 研究チームは、ゲノム言語モデル「Evo 1」「Evo 2」を用い、細菌に感染するウイルス「バクテリオファージ」の一種であるΦX174をテンプレートとして、完全なゲノム配列を生成した。実験では、AIが設計した候補のうち16種類が実際に増殖し、大腸菌に感染できることを確認した。 **AIを用いたバクテリオファージのゲノム設計の流れ。配列生成、設計評価、ゲノム構築、宿主細胞での試験までを示す** ![aec institute samuel king x.jpg] :::small 画像の出典:[Samuel King氏のXより]{target=“_blank”} ::: 生成されたファージには、最も近い自然界のゲノムと比べて多数の変異を持つものも含まれた。[Arc Institute]によると、16種類はそれぞれ最も近い自然界のゲノムに対して67~392カ所の新たな変異を持ち、複数のファージは元となったΦX174より高い適応度を示した。また、AI生成ファージを組み合わせたカクテルは、ΦX174に耐性を獲得させた大腸菌株への有効性も示している。 この成果は2025年9月17日にbioRxivで[プレプリントとして公開] されている。今回研究が査読を経てScienceに正式掲載されたことに加え、その技術をどう管理するかという議論が前面に出た点にあるといえる。 ## バイオセキュリティ専門家、AIによるウイルス設計の安全管理に警鐘 Scienceは研究論文と同時に、Johns Hopkins Center for Health SecurityのThomas V. Inglesby氏とMoritz S. Hanke氏による解説記事「[AI-designed viral genomes]」を掲載した。 両氏は、生成AIによって機能するウイルスゲノムを構成できる能力がすでに存在する一方、「それを安全に導くガバナンスは存在しない」と指摘。こうした技術は生命科学への応用が期待できる一方で、バイオセーフティとバイオセキュリティに「緊急の課題」を突きつけているとの認識を示した。 さらに、同じ手法が別種のウイルスに適用できるかは現時点で明らかではないものの、AIによって人間や動物、植物に感染する新たな病原体のゲノムが設計されれば、既存の対抗手段では封じ込められない可能性があると警告している。 今回使われたバクテリオファージは細菌に感染するウイルスであり、人間や動物に直接感染するものではない。Arc Instituteは2025年の発表時、実験には非病原性の大腸菌を使用したほか、Evoがヒトウイルスの配列を生成できないよう学習データから意図的に除外するなど、安全上の制約を設けたとしている。 ## 医療応用への期待と、AIによるゲノム設計をどう管理するか バクテリオファージを使って細菌感染症を治療する「ファージ療法」は、抗菌薬が効きにくい薬剤耐性菌への対策として研究されている。目的の細菌に適したファージを自然界から探す代わりに、生成AIで特定の標的に合わせた多様なファージを設計できれば、新たな治療法の開発につながる可能性がある。 今回の研究は、生成AIが単一のタンパク質や遺伝子だけでなく、複数の遺伝子や制御要素が相互作用する「ゲノム全体」を設計し、実際に機能するウイルスを生み出せることを示した。 一方、研究がScienceの査読論文として正式掲載されたことで、その能力を「実現できるか」だけでなく「どこまで利用を認め、どの段階で安全策を設けるか」という問題も現実味を増した。AIモデルへのアクセス、研究審査、DNA合成、実験施設での封じ込めなど、ゲノム設計から実体化までを含めたバイオセキュリティのあり方が改めて問われることになりそうだ。 :::box [関連記事:バクテリオファージの完全設計にAIが挑戦──302種中16種が細菌を殺すことを確認 スタンフォード大とArc研究所が実証] ::: :::box [関連記事:100万文字DNAを一度に解析──Google DeepMind、11種のゲノム過程を統合予測するAI「AlphaGenome」] ::: :::box [関連記事:GPT-4は生物兵器を生み出す支援ができるのか OpenAIの内部安全プロセスがモデルのリスクを評価] ::: :::box [関連記事:Anthropic、最上位「Mythos級」AIを一般提供 保護機能付き「Claude Fable 5」で危険領域はOpus 4.8に切り替え] ::: :::box [関連記事:Googleとイェール大学、単一細胞を対話的に解析できるAI「C2S-Scale 27B」を公開──Gemmaベースの270億パラメータモデルががん免疫治療研究を加速] :::